新機軸
- 作者: 海堂尊
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2006/02/04
- メディア: 単行本
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とにもかくにも、人物造形の爆発力。細かいことは選評で大森望の言うとおり。百人が百人認めるキャラ立ちぶりで、中でも探偵役の白鳥圭輔、近年まれに見る斬新さ。探偵のキャラづけとして「カッコイイ」もしくは裏返して「地味」なんてのは星の数だが、「キモイ」というのは新機軸。石動戯作とかその気がなくもないけど、もっとアグレッシブにキモイ。しかしこれがいいのですね。初期の御手洗モノみたいに、振り回される心地よさを久しぶりに思いだした。破壊的な魅力があります。
書きっぷりからすると、人気次第でたぶんシリーズ化する気なんでしょう。ちょこまかと伏線が張ってある。こういうのは大概寒いもんだけど、本作に限ってはあまり気にならない。いや、シリーズで読みたいですよ。
作者は40歳とのことで、少し驚いた。どちらかというとゲームとかラノベのテキストに親しんだ人の文章という感じがしたので。体言止めが多いし。まあ今時40過ぎのラノベファンなんて普通か?(ラノベ読みと決めつけた)。全体にはリズムがあって気持ちよく読める(と思う)。けして名文ではないけど、そこここの表現に機知というか、とんがった才気を感じた。好きな文章です。
ただ、謎解き面に注文をつけたくなるのもわかる。プロットも確かに地味だし。むー。
応募時のタイトルは「チーム・バチスタの崩壊」だったそうで。「〜栄光」にしたのは英断だったと思う。華のある小説には、華のあるタイトルがふさわしい。
探偵山浦、香川の出。
- 作者: 芦原すなお
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 1999/05
- メディア: 単行本
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東京で私立探偵をいとなむ山浦歩、通称「ふーちゃん」。ある日故郷の幼馴染よりかかってきた電話は”わらべ唄の見立て殺人が起こる気がする”というものだった。「とにかく早よ来い」。半信半疑で香川へ向かうも、果たして殺人は起こり……。
「木兵衛さん 金玉落として どろもぶれ」
尾篭な単語が混じっているが、物語の主旋律となるわらべ唄の一節である。被害者は唄の通り睾丸を切除されて殺される。受け狙いかとも思うが、事件の根幹には土着的な因縁が絡んでいることから考えると、案外テーマ上の必然かもしれない。横溝的血の因縁譚とは、畢竟、金玉の問題であると。
終盤近く、ミステリ史上屈指の(?)もどかしい尋問シーンがあり、必読。すげえイライラするよ!
大きくていい
- 作者: 東川篤哉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/05/30
- メディア: 単行本
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(まあその辺の「狙った」感が気になる向きもあるでしょうが)多分に天然の味わいある作風です。この作家を「だめ、大嫌い!」という人はそうはいないでしょう。賛否分かれるギャグも含めて「しょうがないねえ、あのひとは」と苦笑交じりに愛されるタイプ。
ラストで見えてくる、奇妙な館の真意とそれがもたらすビジョンが大きくていいと思いました。綾辻的な館がひたすら内に篭もるのに対し、こちらは外を向いていますね(←ややバレ)。
牽強付会の気もする。
- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/09/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ピリピリ
2006年なんですね。SF感が漂います。
- 作者: ジョン・ディクスン・カー,永来重明
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1979/12
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舞台はかつてヒトラーも滞在した山荘。そこで十年の時を隔てて繰り返す、不審な墜落事故――いわゆる「謎の墜落物」です。D・グリーンの伝記では割に好意的な評価だけど……どうでしょう? カー好むところの「緊張感漂うヒステリックな雰囲気」が、登場人物だけで完結してる感じ。始終神経質に叫び合うけど、そんなにピリつく気分がどうもピンとこない。カルシウム不足かね。
筋立ても……俺、何か伏線読み飛ばしたかなあ? 驚き所が解りませんでしたよ。
せめてナチスが筋に絡んでくればよかったのですが(そしてヒトラーが犯人!なら神だった)。
というわけで、ノレませんでした。いつかまたカー・レベルが上がったら再読しようと思います。
男女/ロスマク
黒雨様(id:blackrain)よりバトンが渡されていた。まだバトンてあったですか。
こういうものは回してくる君たちに気配りを感じるんだ。いいjobだ。んで?
「男性は『女性』になりきって考えてください。
女性は『男性』になりきって考えてください。
今、この時点で自分が異性に生まれ変わったものとして 以下の質問に答えてください」
ややこしいわねえ・・・。
1.朝起きて最初にすることは?
二度寝。低血圧をますますこじらせているはずです。
2.あなたの職業(学校)はなんですか?
就職は難しい気がします。
3.どんな相手と付き合ってみたいですか?
多少なりお酒は飲めて欲しいかしら。
4.自分の自慢できるところはどこですか? 具体的に。
クールなバディ。主張しすぎないスリムなフォルムです。
5.どんな格好をしてみたいですか?
コンサバ系
6.どこに行ってみたいですか?
ラルクのコンサート
7.もし本当に自分が異性に生まれ変わったとしたら、その異性となった自分と付き合ってみたいですか?
却下。
8.このまま生まれ変わったままでいたいですか?
どうせならちょいモテオヤジとかになりたいです。
そっちの方が手間もかからないと思うんですが。
9.このバトンを5人の友達に回してください
察してください。
以上です。
ロス・マクドナルド「ドルの向こう側」(私探・長・早)
重厚なハードボイルド本格。こういう、ため息をついてうなだれるような読後感は、やはりライトで切ないノベルには中々ないもんですね。人物たちの「関係」性が四転五転してゆく展開は鮮やかのひとこと。
「あなたは人間の間のつながりにしか興味がない。例えば―」(中略)「―配管工のように」
ある種ロスマクのエッセンスであり、法月綸太郎の作風を考える上でもキーとなる部分だと思います――というのを昔どこかで読んだような読まないような。