探偵山浦、香川の出。

月夜の晩に火事がいて

月夜の晩に火事がいて

横溝正史の岡山物から、絵草子的な煽りを抜いた感じ。+香川弁ギャグ。
東京で私立探偵をいとなむ山浦歩、通称「ふーちゃん」。ある日故郷の幼馴染よりかかってきた電話は”わらべ唄の見立て殺人が起こる気がする”というものだった。「とにかく早よ来い」。半信半疑で香川へ向かうも、果たして殺人は起こり……。
「木兵衛さん 金玉落として どろもぶれ」
尾篭な単語が混じっているが、物語の主旋律となるわらべ唄の一節である。被害者は唄の通り睾丸を切除されて殺される。受け狙いかとも思うが、事件の根幹には土着的な因縁が絡んでいることから考えると、案外テーマ上の必然かもしれない。横溝的血の因縁譚とは、畢竟、金玉の問題であると。
終盤近く、ミステリ史上屈指の(?)もどかしい尋問シーンがあり、必読。すげえイライラするよ!