ヒロタカ

たとえば、オールドパーを頼むとする。
すると隣の男は「パーだけにパーだな、どう?」会心の表情でギャグの具合を尋ねてくる俺は笑わなければならない。だから、頼むときはいつも慎重だ。
I.W.ハーパーも危険球、ジャックダニエルだって試したことはないが、「ダニ」の部分に不安が残る。だからジムビームを頼む。60の彼はガノタではない。


さてそんな葛藤とはほぼ関係なく、飛浩隆を読む。
飛浩隆『象られた力』
ちくま学芸文庫のような装丁がいかすSF短編集、伝説の作家なんだとか。たしかにこれは語り草になるかもしれない。
「五感/五官を刺激する」というのが定評だが、中でも巻頭話「デュオ」の「死臭」というフレーズのインパクトは大。ふだんから死やら血やらが大盤ぶるまいの本ばかり読んでいるが、こう印象に残るのはめったにない。ほか、表題作の味覚と視覚が絡み合う描写など絶品、官能的ってんですか。
「デュオ」は乙一ファンは嵌まるプロットかもしれない。そういや乙先生の本名はヒロタカ、「呪界のほとり」のラノベっぽい雰囲気も楽しいね。

象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)