新機軸

チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光

感想をまとめるのがしんどいので、覚書風に(=乱雑に)。

とにもかくにも、人物造形の爆発力。細かいことは選評で大森望の言うとおり。百人が百人認めるキャラ立ちぶりで、中でも探偵役の白鳥圭輔、近年まれに見る斬新さ。探偵のキャラづけとして「カッコイイ」もしくは裏返して「地味」なんてのは星の数だが、「キモイ」というのは新機軸石動戯作とかその気がなくもないけど、もっとアグレッシブにキモイ。しかしこれがいいのですね。初期の御手洗モノみたいに、振り回される心地よさを久しぶりに思いだした。破壊的な魅力があります。
書きっぷりからすると、人気次第でたぶんシリーズ化する気なんでしょう。ちょこまかと伏線が張ってある。こういうのは大概寒いもんだけど、本作に限ってはあまり気にならない。いや、シリーズで読みたいですよ。

作者は40歳とのことで、少し驚いた。どちらかというとゲームとかラノベのテキストに親しんだ人の文章という感じがしたので。体言止めが多いし。まあ今時40過ぎのラノベファンなんて普通か?(ラノベ読みと決めつけた)。全体にはリズムがあって気持ちよく読める(と思う)。けして名文ではないけど、そこここの表現に機知というか、とんがった才気を感じた。好きな文章です。
ただ、謎解き面に注文をつけたくなるのもわかる。プロットも確かに地味だし。むー。
応募時のタイトルは「チーム・バチスタの崩壊」だったそうで。「〜栄光」にしたのは英断だったと思う。華のある小説には、華のあるタイトルがふさわしい。