EQ薫

北村薫「ニッポン硬貨の謎」(探・長・創)
あらすじ:エラリークイーンが日本で変質者をつかまえた。
系列としては「六の宮の姫君」。過去の論文を小説に溶かしこんだタイプのもの。
昔、ダ・ヴィンチだったか「クイーン私の一冊」みたいな企画があって、北村先生は「シャム双子の謎」を挙げておられた。”この本には訳者も気付かないであろうスゴイ仕掛けが施されているんですよ、けれどそれを十分に語るには原稿用紙四十枚が必要”とフェルマーの定理みたいなことを言っていて、随分焦れた覚えがある。
そのシャム双子論がついに、本書でおひろめとなった。しかも、誰もが彼こそもっともその問題にふさわしいと思い続けていた、かの「五十円玉二十枚の謎」、その北村版解決をひっさげて。
出来を問われれば正直苦笑いかもしれない。シャムはともあれ、五十円の方は……。後期クイーンらしく、あえて言葉遊び(駄洒落)にこだわったのかなとも思ったが、解説読むとそうでもなさそう。でもいいや。
ともかく、本書はクイーンのパスティーシュとして大変素晴らしい。クイーンよりクイーンらしく、井上勇よりぎこちなく、青田勝より感傷的、でも北村薫
文体の至福がここにあると思います。
ニッポン硬貨の謎
競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)
シャム双子の謎 (創元推理文庫 104-11)