いやらしい

蘇部健一「ふつうの学校②―ブラジャー盗難事件の巻―」(探・連・講)
あらすじ:破天荒教師・稲妻快晴がいやらしい笑みを浮かべながら学校のトラブルを解決する!
一人称のジュブナイルというのは、基本的に不可能である。本当に「らしい」と読者に思わせるには子どもの言葉、思考で書かねばならない。しかし完全な子どもの思考・言語を採択すれば、その小説は小説としてもはや成り立たない(清水義範ならやりそうですが)。ジュブナイルは結局、どこで見切りをつけるかというジャンルといえる。このように一つの流れとして成立するまでには、幾多の作家の呻吟苦吟があったことだろう。今も苦闘していることだろう。
蘇部先生は全部無視しました。
主人公の外池(とのいけ)明は小さな「六とん」である。保険調査員が小学五年生に、一人称が「私」から「僕」になったくらいで、文体も物の考えかたも、ギャグのリズムも、まんま「六とん」式。食玩のくだりだって、単なる作者の趣味であろう。ぜんぜん、子どもじゃない。
なので、もともとのファンならにやついて楽しめる作品かと存じます。構成はしっかりしているよ。そうして、作中稲妻先生が何回いやらしい笑みを浮かべるか数えてみよう!
ふつうの学校〈2〉ブラジャー盗難事件の巻 (講談社青い鳥文庫)
六枚のとんかつ (講談社文庫)