都筑、曰く

エドワード・D・ホック「サム・ホーソーンの事件簿Ⅲ」(探・連・創)
あらすじ:一見ありえない事件でも、サムにかかればすぐ解決なのですよ?
好評シリーズ……なのだろう。都筑道夫に言われるまでもなく小説的味わいなどはかけらもないが、気付くとつい手にとってしまう。依存性の高い短編集。Dr.ホーソーンが不可能犯罪に出会っては解き明かすというパターンは、都筑道夫に言われるまでもなくマンネリの極みだが、ここちよい。不可能犯罪ものが12編続いてちょっと食傷してくるころに「ナイルの猫」――都筑道夫言うところのモダーン・ディテクティブストーリーの手本のような作品――でピリ、と締める構成もいいんじゃないでしょうか。

以下不満。
本シリーズは全作品を通じて、老ホーソーン医師が、禁酒法時代の自分の活躍を聞き手(正体不明:作中では「きみ」と語られるのみである)に酒を勧めながら語ってきかせるという構成をとっている。もったいないなと思うのが、老ホーソーンは昔も今も、とても紳士な点。主に語り口の問題なのだが、Ⅰ〜Ⅲを通じて眉唾チックな不可能犯罪が披瀝される割にはツッコむ隙がない。まじめだからだ。アル中の妄想じゃねえの? と疑わせるくらい、いっそベロベロの口調に「訳」してた方が、絶対味わいは増したと思うのでした。
サム・ホーソーンの事件簿3 (創元推理文庫)

文がみだれ気味なのはお酒が悪いんです。