何でも本格と言やいいと

ウィリアム・ヒョーツバーグ『堕ちる天使』
珍しい、ハードボイルドとオカルトホラーのジャンルミックス。本格では良くあるけれど……。面白い。S・キング御大は「チャンドラーが超常現象(オカルト)を書いたようなもの」と評したそうだが、むしろロスマクに近いかもしれない。手の込んだプロットと大仕掛けは、本格といっていいものだ。ホラー形式ならではの伏線の張り方も楽しい。
文体はさほどぱっとしない。訳のせいもあるだろう。(ハードボイルドっぽさを演出しようとしたのか)スラングに振られまくったルビが、かなり野暮ったい。ただこのゴチャゴチャした字面が、改行の少なさもあいまってビザールな雰囲気を演出するのに成功している。気もする。