実験小説 ぬ (光文社文庫)
浅暮三文「傑作短編集 実験小説 ぬ」(? 短 光文社)
あらすじ:街で見かける、帽子の男。ふと興味をもった語り手は彼の行状を観察しはじめるが……(「帽子の男」)
サブタイトルの「傑作短編集」が、ネタでもハッタリでもない正銘の傑作短編集。ぱらぱら頁をめくってゆくと♀←√¶orz(イメージ)といった按配で、何やら絵とも記号ともつかないものが散見されるが、これは話の筋を追ってゆけばきちんと理解される仕組み。どうせ絵を入れるなら使うなら、せめてこれくらいはやって欲しい――少なくとも出来るんだという見本です。
冒頭の「帽子の男」なんて読んだらもう二度と同じように街を歩けない、怖い! 帯では筒井康隆を引き合いに出してたが、むしろ初期の清水義範をほうふつとさせる……かな? ジャンル分けは困難、小説の版図を地味に広げるまさに実験小説でした。